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2024.11.20 ブログ

屋根の色による温度の違いをデータを基にシミュレーションしてみた

こんにちはマルミ美装工芸です。

 

ご自宅の塗り替えをご検討中の方は何色で塗装するか悩まれるかと思います。

色選びによってご自宅を理想の姿に変えることができますが、屋根の色に関しては一つ考えなければならない問題があります。

それは『屋根の色によって屋根の表面温度が変わるのか』という問題です。

以前のブログ記事で色による屋根温度の違いを実際に測定したのですが、今回はそのときのデータを基に様々な色によってどれぐらい温度に差がでるのかシミュレーションをしてみました。

 

以下本文では簡単な計算を行うのですが、数字アレルギーの方のために先に結論を書いてしまいます。

『白やグレーなどの淡い色では屋根の表面温度は下がるが、黒、茶色、緑、紺色などの濃色では色ごとの温度差がほとんどない』です。

屋根の色において白を選択することはほとんどありませんので、ざっくりとグレーとそれ以外の色で温度差が生まれる程度なので、色ごとの屋根の表面温度の違いを考慮する必要はないと言っていいでしょう。

それでは本文で解説していきます。

太陽光と反射率について

太陽からは様々な波長の電磁波が地球に放出されています。波長ごとに紫外線、可視光線、赤外線などに分類することができます。

これらの波長の電磁波が大気中の粒子に当たることにより気温が上昇し、人間の体に当たることにより暖かいと感じています。つまり電磁波の持つエネルギーは物質を温めるという性質があります。

これは電子レンジがマイクロ波という電磁波を出して食材を温めていることと同じ原理です。

そしてこれらの電磁波は『波』であるため、反射するという性質を持っています。

私たち人間はある物質から反射された可視光線を見ることにより『色』を知覚しています。

可視光線の波長は380~780ナノメートルなのですが、様々な波長の反射の組み合わせにより色を知覚しているのです。

そして電磁波を反射するということは熱となるエネルギーを反射していると捉えることができます。

以上のことから、色が持っている可視光反射率を調べることにより、屋根の色によってどれぐらいの温度の差が発生するか推計することができます。

可視光日射反射率を計算する

以前のブログ記事において屋根用塗料のファインパーフェクトベスト塗装後の温度を測定したのですが、ファインパーフェクトベストのカタログに反射率の記載がありません。しかし、その遮熱塗料版であるパーフェクトクーラーベストには反射率の記載があるので、これを基に計算してみたいと思います。

 

まずは用語の整理をさせてください。

全日射反射率:可視光線と近赤外線を反射する能力

近赤外日射反射率:近赤外線を反射する能力

太陽光から紫外線を除いたエネルギーのうち、可視光線と近赤外線の割合は諸説ありますが、だいたい6:4の割合です。これを簡単に図示すると以下のようになります。

パーフェクトクーラーベストのニューブラウンとライトグレーの各反射率は以下の通りです。

  全日射反射率 近赤外日射反射率
ニューブラウン 32.4% 60.6%
ライトグレー 55.7% 80.4%

 

これら数値を上の図に当てはめると可視光日射反射率を計算することができます。

 

計算式を書くと可視光反射率をxと置いて

32.4=60.6×0.4+0.6xとなり、これを解くと可視光反射率は8.24%と求まります。

同様にライトグレーの可視光日射反射率を求めます。

 

以上より、ニューブラウンという色の可視光反射率は8.24%、ライトグレーという色の可視光反射率は23.54%と求めることができました。

 

データを基に検証してみる

2024年7月に隣同士のお宅で同じ屋根塗料(ファインパーフェクトベスト)の色違いで屋根塗装を行ったので、その際に屋根の温度を測定させていただきました(こちらの記事でその様子をご覧いただけます)。

屋根の温度を測定した結果、ニューブラウンが68.3℃、ライトグレーが58.1℃でした。

遮熱塗料ではない通常の塗料なので近赤外線日射反射率は同じと仮定すると、温度の違いは可視光日射反射率と仮定することができます。

 

以上からまずはニューブラウンのデータから検証してみます。

可視光日射反射率は8.24%なので、91.76%の可視光日射を吸収した結果、68.3℃になったと言えます。仮に100%の可視光を吸収していた場合、74.4℃(68.3÷0.9176)となります。

 

次にこの74.4℃を用いてライトグレーの温度を計算します。可視光日射反射率は23.54%なので、計算上の屋根温度は56.8℃(74.4×(1-0.2354))となり、実測値である58.1℃に近いことが分かりました。

 

データを検証してみた結果、カタログ上の数値から求められる温度と実測値とで乖離が少ないことが分かりました。

 

データを基にシミュレーションしてみる

ニューブラウン、ライトグレーの時と同様に以下の各色の可視光日射反射率を計算します。

そして、2024年7月の測定日と同じ条件と仮定した場合の計算上の屋根温度をシミュレーションしてみました。

 

  可視光日射反射率 計算上の屋根温度
クールホワイト 55.88% 32.8℃
ミラノグリーン 8.22% 68.2℃
ベネチアンブルー 9.04% 67.6℃
ジェットブラック 7.36% 68.9℃

シミュレーションした結果、白以外の色では屋根温度に違いはほとんど見られないことが分かりました。特に黒は一番熱を吸収しやすいというイメージがあったため、黒と濃色の緑、青とでの違いがほとんどないことは意外でした。

 

 

まとめ

最初に結論を述べたとおり、『白やグレーなどの淡い色では屋根の表面温度は下がるが、黒、茶色、緑、紺色などの濃色では色ごとの温度差がほとんどない』ことが分かりました。

この結論は遮熱塗料であっても通常の塗料であっても同じです。

屋根の表面温度を気にするのであれば、遮熱塗料を使い、さらにグレーなどの淡い色にする必要があり、淡い色が外観とマッチしないのであれば基本的にはどんな色でも表面温度はほとんど変わらないと言えます。

 

皆様の参考になりましたら幸いです。

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